【酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ】第2回「辛口・甘口」

【酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ】第2回「辛口・甘口」
🍶 酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ

この企画は、お酒の用語や造り、歴史など、少し分かりにくい話を噛み砕いて整理するために、地酒専門店 酒逢の店主とAIが対話形式で掘り下げていく企画です。

店主の知識や経験をベースに、AIで資料やデータを整理しながら、「なぜ?」「本当に?」まで確認していきます。

今回のテーマは、日本酒を選ぶときの頻出ワード「辛口・甘口」。
あまりにも身近な言葉ですが、「そもそも辛口って何?」「日本酒度って何を測ってるの?」「昔から辛口・甘口って言ってたの?」と掘っていくと、意外と奥の深い話になりました。

対話形式なので、話の流れ次第では少々脱線したり長くなったりしますが、そのあたりも含めて気楽にお楽しみください😁

第2回「辛口・甘口」

〖酒逢店主🍶〗

じゃぁ今日は、日本酒を話す時の頻出ワードである「辛口・甘口」について話すよ。

〖AI 🤖〗

うん。「辛口・甘口」は、日本酒を説明するときに本当によく使う言葉だね。

お客さんとの会話でも、商品説明でも、

「これは辛口です」
「やや甘口です」
「甘辛で言えば辛口寄りです」

みたいに、ごく普通に使われてる。

ただ、普段あまり深く考えずに使っているわりには、掘っていくと結構ややこしい言葉でもあると思う。


「辛口」は、実は酒屋泣かせな言葉でもある

〖酒逢店主🍶〗

実は酒屋泣かせな言葉でもあるんだよね。

酒屋が把握してる「辛口」と、お客さんが思ってる「辛口」がズレてることが…けっこう多い。

〖AI 🤖〗

それはありそう。

酒屋側は日本酒度や酸度、香り、後口、アルコール感なんかも含めて辛口・甘口を捉えているけど、お客さん側はもっと感覚的に、

「口に入れた瞬間に甘くない」
「後味がスッと切れる」
「ベタッとしない」

みたいな意味で「辛口」と言っていることも多そう。

〖酒逢店主🍶〗

お客さんによっては「飲みやすい」とか、なんなら「美味しい」に近いイメージまで「辛口」に含めて、

「辛口のお酒が欲しいんですけど……」

って言う人もいるからね。

酒逢では、

「定義として“辛口”というのは、だいたいこういう状態のことを言うんですが、そんな感じでいいですか?」

とか、

「何か一緒に食べるお料理とか言ってもらっても、おすすめできますけど……」

みたいな確認作業から入ることが多いかな。

そこでいきなり「辛口とは」の授業を始めちゃっても、お客様も困るからさ(笑)。

〖AI 🤖〗

なるほど。

つまり「辛口」という言葉は、酒質を厳密に説明する言葉である一方、接客では「お客さんの好みを探るための入口の言葉」でもあるんだね。

〖酒逢店主🍶〗

そうだね。

さすがに「辛口」を探してるお客さんは「大甘口」は求めてないからね(笑)。

でも、そこから

「お客さんが本当に欲しいのは、どんな感じのお酒なのかなぁ……」

と探っていくには、まだだいぶ距離がある。


では、「辛口」「甘口」ってそもそも何?

〖AI 🤖〗

ここで一度、用語として整理しておこう。

まず、日本酒の「辛口」「甘口」には、

「日本酒度が○以上なら辛口、○以下なら甘口」

という全国共通の絶対的な境界線があるわけではありません。

基本的には、

甘口=飲んだときに甘味を比較的強く感じる酒質
辛口=飲んだときに甘味を比較的弱く感じる酒質

と考えると分かりやすい。

ここで重要なのは、「辛口=何か辛い成分が入っている」という意味ではないこと。

唐辛子や胡椒のような「辛味」が存在して、それが多いから辛口になるわけではありません。

そして、日本酒の甘辛を判断する代表的な目安として昔から使われてきたのが「日本酒度」です。


酒逢では「日本酒度」をこう分類しています

〖酒逢店主🍶〗

まぁ、絶対的な境界線はないとはいっても、ある程度基準を決めないと「辛口」「甘口」という言葉そのものが分類として意味をなさなくなる。

だから酒逢(特に通販サイト)では、日本酒度が公開されているお酒については、以下の基準で統一してる。

  • 超辛口:日本酒度 +10.0以上
  • 大辛口:+6.0〜+9.9
  • 辛口:+3.5〜+5.9
  • ほどほど:−1.4〜+3.4
  • 甘口:−5.9〜−1.5
  • 大甘口:−6.0以下

〖AI 🤖〗

つまりこれは酒逢独自の日本酒度分類であって、法律や業界全体で決められた基準ではない。

でも、店頭でも通販でも同じ基準を使えば、

「昨日は+4を辛口と言っていたのに、今日は+2も辛口になっている」

みたいなブレはなくせるわけだね。

〖酒逢店主🍶〗

そういうこと。

日本酒度でまず客観的に分類して、そのうえで実際に飲んだ印象は商品説明で補足してる感じだね。


そもそも「日本酒度」って何を測ってる数字なの?

〖酒逢店主🍶〗

今は振動式密度計とかで測れるし、昔から浮ひょうを使った測定方法もあるけど……そういう「どの機械を使うか」って話じゃなくてさ(笑)。

比重の違いで数値を出してるはずだけど、ぶっちゃけ俺、理科とか数学嫌いだったから、どういう仕組みで+とか−とか出してるのか詳しく知らないんだよね。

教えて。

〖AI 🤖〗

かなり簡単に言えば、日本酒度は、

「同じ量のお酒を比べたとき、水より重いか・軽いか」

を見るための、日本酒専用の尺度です。

15℃のお酒を基準に測り、比重が大きい、つまり重い酒ほど日本酒度はマイナス方向へ。

比重が小さい、つまり軽い酒ほどプラス方向へ動きます。

式にすると、

日本酒度 =(1 ÷ 比重 − 1)× 1443

となります。

〖酒逢店主🍶〗

はい、もう数字が出た時点で理数系嫌いな人が遭難し始めたきがする。俺も数式見た時点でちょっと足滑らしそうになってる(笑)。

もっと感覚的に。

〖AI 🤖〗

じゃあ、水に砂糖を溶かすところを想像すると分かりやすい。

水に糖などの成分が溶ければ、液体は重くなります。

一方、アルコールは水より軽い。

だから大ざっぱには、

糖などのエキス分が増える → 重くなる → 日本酒度はマイナス方向
アルコールの割合が増える → 軽くなる → 日本酒度はプラス方向

という綱引きになっています。

ここが大事で、日本酒度は「糖分そのものを直接測っている数字」ではないんです。

あくまで、お酒全体の比重を数値化したもの。

糖分量によって比重が変化するので、結果として甘口・辛口を推測する目安として使われているわけです。


ちょっと脱線。アルコール15%の水って日本酒度いくつ?

〖酒逢店主🍶〗

ちょっと横道にズレるけど、興味本位で聞きたい。

例えば「100%のアルコールを水で15%濃度まで薄めただけの液体」の日本酒度って何度になるの?

日本酒じゃないけど(笑)。

〖AI 🤖〗

日本酒ではない液体に、無理やり日本酒度の式を当てはめる遊びだけど(笑)、おおむね+29前後になります。

〖酒逢店主🍶〗

そんな行くんだ(笑)。

過去に取り扱ってた酒でも、+21とか+22くらいが最高だった記憶がある。

調べてみたら、六歌仙の「山法師 純米 爆雷辛口生原酒」が日本酒度+28らしい。

じゃあ+28の日本酒って、15%のアルコール水とほぼ同じ日本酒度なの?

そんなんありえるの?(笑)

〖AI 🤖〗

ありえます。

しかも、ここは日本酒度の正体を理解するにはすごく分かりやすい例。

同じ日本酒度だからといって、中に入っている成分が同じという意味ではないからです。

「爆雷」はアルコール18%の原酒なので、水+アルコールだけならかなり軽い液体になります。

でも実際の日本酒には、糖類、アミノ酸、有機酸、そのほか米由来のさまざまなエキス分が含まれています。

アルコールは液体を軽くする方向へ、エキス分は重くする方向へ作用する。

その最終結果として、日本酒度+28という比重になっているわけです。

〖酒逢店主🍶〗

なるほどね。

「日本酒度+28」という数字だけ見ても、液体の中身まで+28という一つの状態が決まってるわけじゃないのか。

〖AI 🤖〗

そう。

だから、日本酒度は便利だけど日本酒度=糖度ではないし、日本酒度だけで味のすべてが分かるわけでもない


数字の話はこのへんで。では「辛口」は口の中でどう感じる?

〖酒逢店主🍶〗

だいぶ深くなり過ぎてきたね(笑)。

理数系苦手な人は既に遭難してるかもしれないから、ここらへんで感覚の話に戻そう。

前に、

「辛口=何か辛い成分が入っている」という意味ではない

って話が出たけど、確かにそうなんだよね。

甘口は甘いから比較的分かりやすい。

でも辛口って、実際に飲んだ感覚だけで判定するのが難しい酒も結構ある。

香りが派手だったり、甘そうな果実香が強かったりすると、なおさら分かりづらい。

俺は「辛口感」を見るとき、口に含んで舌の上でアルコール感のピリピリをどのくらい感じるかも結構見てるかな。

「味覚」というより「痛覚」に近いように思う。

〖AI 🤖〗

その感覚自体は理にかなっています。

アルコールによるヒリヒリ、熱い、ピリッとするといった刺激は、甘味や酸味のような味覚だけではなく、口の中の感覚神経によって感じる刺激でもあります。

だから「味覚というより痛覚に近い」という表現は感覚として分かりやすい。

ただし、

ピリピリが強い=辛口

と定義することはできません。

アルコール度数や温度によって刺激感は変わるし、甘辛の感じ方には糖分、酸、香り、口当たり、後口など、いろいろな要素が関係するからです。

なので、

「酒逢店主は、体感的な辛口感を見るときの一つの手掛かりとして、舌の上のアルコール刺激も見ている」

くらいがちょうど良さそう。


「辛口・甘口」という言葉は、いつ頃から使われていた?

〖酒逢店主🍶〗

そもそも「辛口」「甘口」って表現がこれほど広く普及してるのは、酒を買う時に事前に味を確認できないことが多かったのもあると思うんだよね。

そのうえで、辛いか甘いかによって酒の好みも、合わせる料理も大きく違う。

歴史的にはいつ頃から使われてたの?

室町時代とかの酒って、今よりだいぶ甘かったイメージがあるんだけど。

〖AI 🤖〗

調べてみると、これが意外と古い。

文献で確認できる範囲では、酒について「辛口」と表現した例が1672年、「甘口」と「辛口」を対比した例が1679年に確認されています。

もちろん、

「1672年に“辛口”という言葉が発明されました」

という意味ではなく、少なくともこの頃には、"酒の状態を表す表現の一つ"だったと考えられます。

さらに元禄初期頃の酒造技術書『童蒙酒造記』には、

「甘口仕掛之事」
「辛口仕掛之事」

という項目まであります。

つまり17世紀後半には、飲み手が甘口・辛口を区別していただけではなく、造り手側にも「甘口に造る」「辛口に造る」という酒質設計の考え方があったわけです。

〖酒逢店主🍶〗

1670年あたりでもう「酒の辛い・甘い」が文献で確認できるんだ🤔

「生類憐みの令」の愚痴を言いながら辛口の酒を飲んでたかと思うと、なかなか我が国のグルメの歴史は長いね(笑)。

〖AI 🤖〗

時代感としてはかなり近い(笑)。

ただし当時も、江戸や上方の都市部と農村部では暮らしも酒の入手環境もかなり違ったはずなので、

「江戸時代の日本人みんなが甘口・辛口を選び放題だった」

とまで一般化するのは避けた方がいい。

それでも17世紀後半の都市部では酒の商品流通や外食文化がかなり発達していて、甘口・辛口を造り分け、選んで楽しむ文化がすでに存在していたことは確かそうです。


そして戦後。「甘口」から「淡麗辛口」へ

〖酒逢店主🍶〗

じゃあ歴史を一気に進めて、戦後の「辛口ブーム」の話。

俺のざっくりした把握では、

戦中にアル添の技術

終戦後の物資不足・酒不足

闇市の粗悪な酒

米が足りない中でも酒の需要はある

三増酒

その反動もあって淡麗辛口のニーズ爆発

みたいなイメージなんだけど。

〖AI 🤖〗

大筋の方向は近いけれど、最後の部分はもう少し長い時間をかけて変化したと考えた方が正確です。

戦時中は原料米が不足し、1943年には国内でも清酒もろみへのアルコール添加が始まります。

敗戦後はさらに食糧事情が悪化し、正規の酒も不足。密造酒の横行も大きな社会問題になりました。

そして1949年には、アルコールだけでなく糖類や有機酸なども加える増醸法、いわゆる三倍増醸が始まります。

ただしここで注意したいのが、

アル添酒=三増酒

ではないこと。

現在の吟醸酒・本醸造などで行われる醸造アルコール添加と、戦後の増醸法は、目的も使用方法も同じものではありません。

そして面白いのが、1950〜60年代の日本酒市場は、むしろ甘口化していったこと。

1961年の醸造研究でも「一般に清酒が甘口化している」と書かれていて、甘口酒をどう造るかという技術研究まで行われています。

その後、1960年代半ば頃から各地の中小蔵で純米酒造りを復活させようという動きが生まれ、1970年代には地酒そのものへの関心が高まっていきます。

1975年には「幻の日本酒を飲む会」や「日本名門酒会」が誕生。

1970年代末から全国の市販酒には明確な辛口化傾向が現れ、1980年代になると新潟酒を中心とした「淡麗辛口」が全国的なブームになっていきます。

〖酒逢店主🍶〗

じゃあ、

「三増酒が嫌われたから、反動で淡麗辛口ブーム」

くらいに一本の線でつなげると雑なのか。

〖AI 🤖〗

そう。

より正確には、

戦後の物不足の中で「量を確保する酒」が必要だった時代から、社会が豊かになるにつれて「量より質」「全国一律の酒より地酒」「自分の好みに合う酒」へと消費者の関心が変化していった

と考えると分かりやすい。

その大きな流れの中に、

  • 純米酒への回帰
  • 地酒ブーム
  • 淡麗辛口ブーム

が、それぞれ別の動きとして重なっていたわけです。


今の日本酒に「辛口・甘口」の二択だけでは足りなくなってきた?

〖酒逢店主🍶〗

「その時代に求められる酒」って、それぞれの時代の生活環境ともリンクしてるよね。

例えば終戦直後は、酒の原料の米だけじゃなく、そもそも食品そのものが不足していた。

今みたいな全国規模の物流網やスーパー、チェーン店もないから、地域で手に入る食材を地域の商店街で買って、家庭で料理するのが基本だった。

それが今ならスーパーへ行けば日本中どころか世界中の食材が並んでる。

家庭料理そのものの幅が広がってるし、飲み屋街へ行けば和食、焼鳥、中華、イタリアン、韓国料理、エスニック……何でも選べる。

それに日本酒側も、昔より圧倒的に種類が増えてる。

そう考えると、地酒界隈でずっと使われ続けている「辛口」「甘口」という頻出ワードが、なんか今の状況に上手くフィットしなくなってる感じがするんだよね。

むしろ日本酒マニアっぽくなればなるほど、「辛口」「甘口」って言葉で酒を説明しなくなるイメージ。

〖AI 🤖〗

たぶん「辛口・甘口」が役に立たなくなったというより、昔はそれだけでもかなりの情報量を持てた分類が、今の日本酒には少し粗すぎるんだと思う。

今なら同じ「辛口」の中にも、

  • 香り控えめで、旨味があり、燗にも向く辛口
  • 華やかな香りがあって、後口がシャープな辛口
  • 酸が強く、ドライに感じる辛口
  • アルコール感が力強い辛口
  • ガス感があって軽快な辛口

など、まったく違うタイプの酒が入ります。

だから日本酒に慣れてくるほど、

「辛口が好き」

から、

「香りは控えめで、旨味はあるけど後口が切れるもの」
「酸がしっかりしていて、冷酒で軽快なもの」
「ガス感があってドライな感じ」

みたいに、複数の軸で好みを表現するようになる。

その結果として、日本酒に詳しい人同士の会話では「辛口・甘口」で説明する場面が少なく見えるのかもしれません。


最後に――「辛口」「甘口」がダメという話ではありません

〖酒逢店主🍶〗

まぁ、だいぶ長くなったから今回はこのくらいにしようかな。

このブログを読んでくれた人に念のため伝えておきたいのは、

「辛口」「甘口」みたいな分類がダメだと言ってるわけでもないし、それを酒屋や飲み屋で言うことをディスってるわけでもない、ということ。

今回話したかったのは、

  • 実は身近なワード「辛口」「甘口」の定義はこんな感じで
  • 日本酒度という数字は、実はこういう仕組みで
  • 歴史を遡ると、江戸時代には既に甘口・辛口があって
  • 戦後の日本酒も、社会や食生活の変化と一緒に甘口化・辛口化を経験して
  • 特にここ50年くらいで、日本酒も食生活も選択肢がものすごく増えた

……という話。

普段こんな話を店頭で全部始めちゃったら、完全に授業みたいになるからさ(笑)。

お客さんは、

「辛口のお酒を一本買いたいだけなんですけど……」

ってなるだろうし😁

だから普段の接客では必要な部分だけ簡単に確認して、こういう寄り道した話はブログとして書き留めておきたかった。

もし興味のある人の参考になればいいな、くらいの内容として捉えてもらえれば嬉しいかな。

なので今回も、特に善悪の判断も、結論も、提案もありません。

ただ、

「普段当たり前に使っている“辛口・甘口”って、掘ってみると意外と面白い言葉なんだな」

くらいに思ってもらえたら、それで十分です😁

〖酒逢店主🍶 × AI 🤖〗<また次回〜👋👋


📌 日本酒度から実際にお酒を探してみる

酒逢の通販では、日本酒度を基準に「超辛口・大辛口・辛口・ほどほど・甘口・大甘口」に分類し、実際の商品を絞り込んで探すことができます。

今回の話を読んだあとに、「実際に+10の酒ってどんなもの?」「マイナスの酒には何がある?」と見比べてみるのも面白いと思います。

▶ 日本酒度(辛口・甘口)から日本酒を探す

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🍶 お酒の用語・知識に関するよくある質問

質問1:お酒の用語や知識は、なるべく覚えた方がいいですか?

お酒を楽しむために、用語を暗記しなければならないわけではありません。飲んで「美味しい」と思えれば、どんな製法なのか、どんな原料や酵母を使っているのかを知らなくても、それで十分です。わざわざ評論家のように味を言語化する必要もありません。

ただ、それぞれの言葉が何を意味し、どんな歴史や技術的な背景を持っているのかを少しずつ知っていくと、お酒を見るときの「解像度」はかなり変わってきます。

例えば日本酒なら、何も知らずに裏面ラベルを見たときには、「酒蔵名+よく分からない専門用語がたくさん書いてある」くらいで終わってしまうかもしれません。

でも、酒母、酒米、酵母、火入れ、生酒、搾り方など、それぞれの意味が分かってくると、

「生酛なのに、こんなに綺麗なんだ」
「火入れなのに、このフレッシュ感はすごい」
「この酒米を、この蔵はこう表現するのか」

といった、一段違った見方ができるようになります。

用語を覚えること自体が目的というより、そのお酒がどんな背景や技術の積み重ねで造られているのかを見るための材料が増えていく、くらいに考えるのがちょうどいいと思います。

質問2:お酒の用語やスペックが分かれば、飲む前に味を当てられるようになりますか?

ある程度の方向性を予想するための手がかりにはなりますが、完璧に味を当てることはできません。

例えば同じ「生酛」でも、力強く濃醇なお酒もあれば、驚くほど綺麗で軽快なお酒もあります。「辛口」も同じで、一つの分類の中にまったく違うタイプのお酒があります。

原料、酵母、製法、発酵、火入れ、熟成などは、それぞれ味わいに関係する要素ですが、お酒はそれら複数の条件が組み合わさって完成します。

だから知識を「このスペックだから、きっとこういう味だ」という答え合わせに使うよりも、

「この条件から、この造り手はどんな味に表現しているんだろう?」

と考えながら飲む方が、お酒の楽しみ方としてはずっと面白いと思います。

質問3:同じ原料や酵母、同じ製法でも、造り手によって味が違うのはなぜですか?

お酒の味は、一つの要素だけで決まるものではないからです。

例えば日本酒なら、同じ酒米を使っていても、酒蔵の考え方や技術体系、仕込み水、精米、麹造り、酵母、酒母、発酵温度、搾り、火入れ、熟成などが違えば、出来上がるお酒も変わります。

そして、そこが知識を持って飲み比べる面白さでもあります。

例えば同じ原料や製法のお酒を何本か飲んでいくと、「この条件のお酒の中では、この造り手の表現が自分には一番しっくりくる」と感じることがあります。

少しお芝居に例えるなら、「同じ演目でも、演じる役者が変われば表現も変わる」のと似ています。

原料や酵母、製法などの条件が「演目」だとすれば、それをどう表現するかには、造り手の考え方や技術、それぞれの造り手ならではの個性が現れます。

質問4:お酒の知識が増えると、お酒選びはどう変わりますか?

最初は、「甘いのが好き」「辛口が好き」「飲みやすいお酒が好き」といった大きな感覚で選んでいたものが、知識と飲んだ経験が結びついてくると、少しずつ自分の好みを細かく捉えられるようになります。

例えば日本酒なら、

「生酛でも軽快なタイプが好き」
「この酒米を使った中では、この蔵の表現が好き」
「火入れなのにフレッシュなタイプが好き」

といった具合です。

つまり、知識が増えること以上に、“知識によって整理された飲酒経験”が増えていくことが大きいのだと思います。

それによって、単にお酒を分類できるようになるだけではなく、「自分は何を面白いと思うのか」「どんな表現を美味しいと感じるのか」も、少しずつ見えやすくなってきます。

この「お酒の用語・知識解説」も、用語を暗記するための読み物というより、お酒を見る視点を一つずつ増やしていくための読み物として使ってもらえればと思っています。