【酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ】第1回「生もと・山廃」

【酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ】第1回「生もと・山廃」
🍶 酒屋とAIの対話ログで学ぶ、お酒のあれこれ

この企画は、地酒専門店 酒逢の店主が普段AIと話している「お酒に関する疑問」を、対話形式で掘り下げていく実験的な企画です。

もともとは2025年にnoteで公開した対話ログですが、通販サイトへの移植にあたり内容をあらためて確認し、一部を修正・再構成しています。

対話形式なので、話の流れ次第では少々脱線したり長くなったりしますが、そのあたりも含めて気楽にお楽しみください😁

まず、「生酛」と「山廃」って何?

〖酒逢店主🍶〗

今日はお客さんから質問されることの多い「生酛(きもと)と山廃(やまはい)って何?」について喋ろう。 まず、あんまり長くならないように概略を教えて。

〖AI 🤖〗

了解。まず最初に押さえておきたいのは、生酛も山廃も「酒母(しゅぼ)」の造り方だということ。

酒母とは、本格的な仕込みを始める前に、清酒酵母を十分に増やし、雑菌などが増えにくい酸性の環境を整えるための小さな仕込み。 言ってみれば、日本酒の発酵を始めるためのスターターみたいなものです。

生酛(きもと)

  • 酒母の中で乳酸菌を育て、乳酸を造ってもらう
  • 「山卸(やまおろし)」または「酛摺り」と呼ばれる作業を行う
  • 蒸米・麹・水を櫂などですり合わせながら酒母を育てる
  • 時間と手間のかかる、伝統的な酒母造りの一つ

山廃(やまはい)

  • 正式には「山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)」
  • 生酛で行う「山卸」を廃止した方法
  • 乳酸菌を育てて乳酸を造ってもらう点は、生酛と共通
  • 麹の酵素などを利用しながら酒母を育てていく

ものすごく大ざっぱに言うと、

生酛=乳酸菌を育てながら、山卸も行う
山廃=乳酸菌を育てるのは同じだけど、山卸を行わない

という違い。

ちなみに、現在の主流である「速醸(そくじょう)」は、生酛・山廃のように乳酸菌を育てて乳酸を造ってもらうのではなく、仕込みの最初から醸造用乳酸を加えて、酒母を安全に育てやすい酸性の環境を整える方法です。

つまり、最初の理解としては、

生酛=乳酸菌を育てながら、山卸も行う
山廃=乳酸菌を育てるのは同じだけど、山卸を行わない
速醸=乳酸菌に乳酸を造ってもらうのを待たず、乳酸を最初から加える

くらいでOK。

このあと、それぞれの違いをもう少し詳しく見ていきます。


そもそも「酒母」って、なんで必要なの?

〖酒逢店主🍶〗

いきなり生酛とか山廃とか言われても、日本酒ビギナーの方は既に迷子になってるかもしれない(笑)。

さっき「酒母は日本酒の発酵を始めるためのスターターみたいなもの」って言ったけど、そもそも、なんでわざわざ酒母を造るの?

最初から大きなタンクで酒造りを始めちゃダメなの?

〖AI 🤖〗

ここが大事なところ。

酒母の大きな役割は、本仕込みを安全に発酵させられるだけの清酒酵母を、あらかじめ十分に増やしておくことです。

そして、もう一つ重要なのが乳酸によって酸性の環境をつくり、好ましくない微生物が増えにくい状態をつくること

つまり酒母は、

酵母を十分な数まで育て、乳酸による酸性環境の中で本番の仕込みに送り出すための育成場所

みたいなもの。

日本酒の本仕込みでは、麹の酵素が米のでんぷんを糖に変える「糖化」と、酵母がその糖をアルコールに変える「発酵」が同じ醪の中で並行して進みます。 これを並行複発酵と呼びます。

こうした複雑な発酵を安定してスタートさせるためにも、まず小さな酒母で優良な酵母を十分に増やして、雑菌など好ましくない微生物が増えにくい環境を整えておくわけです。

〖酒逢店主🍶〗

部活で言えば、本番の大会に出る前に合宿して、人数とコンディションを整えておく感じか。

〖AI 🤖〗

そうそう(笑)。

「酵母を本番前に十分増やしておく場所」が酒母。

ここが分かると、この先の生酛・山廃・速醸の違いがかなり理解しやすくなります。


生酛・山廃・速醸の大きな違いは「乳酸をどう用意するか」

〖酒逢店主🍶〗

生酛と山廃の話をしてきたけど、今の日本酒では「速醸(そくじょう)」が多いよね。

この三つを比べると、結局「必要な乳酸をどう用意するか」が大きな違いってこと?

〖AI 🤖〗

そう。 かなり本質的な違いです。

生酛・山廃などの生酛系酒母

酒母の中で乳酸菌を育て、その乳酸菌自身に乳酸を造ってもらいます。

「必要な乳酸は、乳酸菌に造ってもらおう」

速醸酛(そくじょうもと)

仕込みの段階で醸造用乳酸を加え、最初から酸性の環境をつくります。

「乳酸が必要なら、人間が最初から用意してあげよう」

という発想です。

生酛・山廃では乳酸菌が増え、十分な乳酸ができるまで待つ必要があります。 一方、速醸では最初から乳酸を加えるため、この期間を大きく短縮できます。

〖酒逢店主🍶〗

イメージとしては、

生酛・山廃が「乳酸菌さん、頑張って乳酸を造ってください!」

速醸が「必要な乳酸はこちらで用意しました。酵母さん、健康に育ってください!」

って感じだな(笑)。

〖AI 🤖〗

かなり分かりやすい(笑)。

細かい技術はもっと複雑だけど、入口としてはその理解で大丈夫。


昔の酒造りから、生酛・山廃・速醸へ

〖酒逢店主🍶〗

歴史も少し整理しておこう。

口噛み酒、水酛、生酛、山廃、速醸……といろいろあるけど、これは古い順に一本の線で進化してきたと考えていいの?

〖AI 🤖〗

そこは少し注意が必要です。

口噛み酒 → 水酛 → 生酛 → 山廃 → 速醸

と一直線に進化したように思われがちだけど、実際の日本の酒造史はそんなに単純ではありません。

口噛み酒

米などを口で噛み、唾液に含まれる酵素によってでんぷんを糖に変え、それを発酵させる古い酒造法の一例です。

ただし、これを現在の酒母造りの直接の出発点として「次に水酛が登場した」と一直線につなぐのは正確ではありません。

菩提酛・水酛などにつながる技術

中世の奈良などでは、乳酸発酵によって酸性になった水を酒造りに利用する技術が発達していきました。

こうした技術は、現在まで受け継がれている菩提酛や水酛などにもつながっています。

生酛

近世には、後の生酛につながる酒母造りの技術が発達していきます。

生酛では山卸を行って蒸米をすりつぶし、米の溶解や糖化を助けながら酒母を育てます。その過程で乳酸菌が増えて乳酸を造り、雑菌などが増えにくい酸性の環境を整えたうえで、酵母を十分に増やしていきます。

そして明治時代へ

明治時代になると、日本酒造りにも科学的な研究が本格的に取り入れられるようになります。

1904年(明治37年)には、現在の酒類総合研究所の前身となる大蔵省醸造試験所が設置されました。

そして、その醸造試験所で1909年(明治42年)、酒母造りを大きく変える山廃酒母と速醸酒母という技術が相次いで開発されます。


「山廃ができた翌年に速醸ができた」は本当?

〖酒逢店主🍶〗

あれ? 俺、「山廃が発明された翌年に速醸が発明された」って聞いた覚えがあるんだけど。

〖AI 🤖〗

正確にはそうではないんです。国税庁や酒類総合研究所の資料を確認すると、

山廃酒母:1909年(明治42年)
速醸酒母:1909年(明治42年)

となっています。

なので、

「山廃が1909年、速醸が1910年だから翌年」

という説明は厳密には間違い。

同じ明治42年に、山卸という大変な作業を廃止する山廃と、醸造用乳酸を利用する速醸という、酒母造りを合理化する大きな技術が相次いで開発された、と考えた方が正確です。

〖酒逢店主🍶〗

一年違いどころか、同じ年だったのか。

これは俺も普通に勘違いしてたわ。


酒母が完成するまでの日数もかなり違う

〖酒逢店主🍶〗

生酛・山廃と速醸では、酒母造りにかかる時間もかなり違うよね。

〖AI 🤖〗

そう。

実際の日数は酒蔵や仕込み方法によって変わるので、一律に「何日」と決めることはできません。

ただ、大きな目安としては、

  • 生酛・山廃などの生酛系酒母:3〜4週間前後(酒蔵・造り方によってはもっと)
  • 速醸酛:2週間前後

と考えると分かりやすいです。

生酛系では、乳酸菌が増殖して乳酸を造るための期間が必要です。

速醸では最初から醸造用乳酸を加えるため、その期間を省くことができます。

ただし、

「山廃は山卸をやらないから、生酛より必ず早く完成する」

という意味ではありません。

山卸という作業の有無と、酒母全体が完成するまでの日数は別の話です。


生酛・山廃は骨太で、速醸は綺麗?

〖酒逢店主🍶〗

俺がこれまで飲んできた印象だと、生酛や山廃って、酸がしっかりしてたり、旨味や奥行きがあったり、骨太な酒が多い印象がある。

逆に速醸には、綺麗で軽快な酒が多い気がする。

この味の違いって、酒母から来るの?

〖AI 🤖〗

酒母の造り方が、その後の発酵や酒質に影響することはあります。

生酛・山廃では乳酸菌が増殖し、乳酸を生成していく過程を経ます。 一方、速醸では醸造用乳酸を加え、早い段階から酸性の環境を整えます。

酒母が育つ過程が違う以上、その後の発酵に影響を与える要素の一つにはなります。

ただし、ここで「生酛だからこの味」「山廃だからこの味」と決めつけるのは危険です。

日本酒の味は、

  • 原料米
  • 精米歩合
  • 麹造り
  • 使用する酵母
  • 酒母
  • 発酵温度
  • 醪の管理
  • 搾り方
  • 火入れ
  • 熟成

など、非常に多くの条件が重なって決まります。

だから、

生酛=必ず濃い
山廃=必ず酸っぱい
速醸=必ず淡麗

というルールがあるわけではありません。

生酛や山廃について「旨味や酸、骨格を感じる酒が多い」と語られることはありますが、あくまで傾向の一つ。

現代では、非常に透明感のある生酛や山廃もあれば、しっかり濃醇な速醸酒もあります。

〖酒逢店主🍶〗

そこは酒屋としても納得。

商品を説明するときも、「山廃・生酛だからこういう味です」とは決め打ちできないもんな。なんなら最近は「山廃・生酛なんだけど、本当に繊細で綺麗で…」みたいな印象をもつお酒も多くなってきたイメージもある。


昔ながらの酒母では、微生物の動きを待つ時間がある

〖酒逢店主🍶〗

それでも、生酛や山廃が面白いのは、乳酸を最初から入れずに、乳酸菌が動いて酒母の環境が変わっていくところだよね。

〖AI 🤖〗

そう。

生酛系酒母では、酒母の中で乳酸菌が増え、乳酸が蓄積して酸性の環境が整っていくという段階を経ます。

その後、清酒酵母が優勢になり、本仕込みへ使える酒母へと育っていきます。

一方、速醸酛では乳酸を最初から加えるので、この「乳酸菌が増えて乳酸を造るまで待つ」という部分を省くことができます。

つまり、

生酛・山廃=微生物の働きを利用しながら環境をつくっていく
速醸=必要な酸性環境を人間が最初から整えてあげる

という違いがあるわけです。

ただし、この違いだけで最終的な味が決まるわけではない。

そこが日本酒の面白いところでもあります。


山廃・速醸が生まれた明治時代と「酒税」

〖酒逢店主🍶〗

山廃・速醸に関するトピックでよく聞くのが…

「当時は酒税が重要だったから、効率よく酒を造ってどんどん売って、戦費調達する意味も大きかったんじゃない?」

みたいな話はよく聞く。

あれは実際どうなの?

〖AI 🤖〗

ここは、事実と推測を分けた方がいいところです。

まず、明治時代の日本で酒税が非常に重要な国家財源だったことは事実です。

1899年(明治32年)には酒税が地租を抜いて国税収入の第1位となり、その後も長く国の重要な税収の一つでした。

また明治37年には国が醸造試験所を設置し、酒造技術の研究や酒質改善、安定した酒造技術の普及を進めています。

その流れの中で、山廃や速醸という技術も開発されました。

ただ、

「戦費を集めるために山廃や速醸を発明した」

と直接結びつけるのは言い過ぎです。

より安全に言うなら、

酒税が国家財政上きわめて重要だった時代に、国も酒造技術の近代化・合理化・安定化を強く進めていた

というところまで。

〖酒逢店主🍶〗

なるほど。

「酒税が重要だった」はファクト。 でも、

「だから戦費を稼ぐために速醸を発明しました」

まで言ったら話をつなげすぎ、ってことね。

〖AI 🤖〗

そういうこと。


「安定して酒を造れる」ということ自体が、大きな技術だった

〖酒逢店主🍶〗

上原浩先生の本なんかを読んでても、昔の酒造りって、今よりずっと「ちゃんと酒にする」こと自体が大変だったんだろうなと感じるんだよね。

腐造したり、狙った酒にならなかったり。

〖AI 🤖〗

現代のような冷却設備、分析機器、衛生設備、精密な温度管理がなかった時代には、発酵を毎回安定して進めること自体が大きな技術でした。

速醸酛では、仕込みの最初から醸造用乳酸を加えます。

そのため、

  • 乳酸菌が乳酸を造るまで待つ必要がない
  • 早い段階から酸性環境を整えられる
  • 酒母造りに必要な期間を短縮できる
  • 安定した酒母造りを行いやすくなる

という大きな利点があります。

だから速醸は、

「昔の面倒な造りを手抜きした方法」

ではありません。

安全で安定した酒造りを実現するための、非常に重要な技術革新だったわけです。


そして今は、生酛でも山廃でも驚くほど綺麗な酒が造れる

〖酒逢店主🍶〗

ここは俺が実際に酒を飲んでいて、一番面白いところなんだけど。

さっきもちらっと言ったけど、今って、水酛とか生酛とか山廃なのに、

「これ、本当に昔ながらの酒母なの?」

って思うくらい、冷やして飲んでも綺麗で軽やかで飲みやすい酒が普通にあるじゃん。

〖AI 🤖〗

そこが現代の日本酒の面白さだと思います。

昔から存在する酒母の技術を使いながらも、現在の酒蔵には、

  • 精密な温度管理
  • 衛生管理
  • 麹造りの技術
  • 酵母・乳酸菌に関する知識
  • 成分分析
  • 冷蔵設備

など、昔にはなかった知識や設備があります。

だから、

生酛なのに透明感がある。
山廃なのに軽快。
水酛なのにフルーティ。

という酒も造られています。

「昔ながらの製法だから、昔ながらの重い味になる」とは限らないんです。

伝統的な酒母造りと、現代の醸造技術をどう組み合わせるか。

そこにも、それぞれの酒蔵の個性が出てくると思います。

〖酒逢店主🍶〗

造り手の皆様の不断の努力に感謝だな。

「生酛だから」「山廃だから」とラベルだけ見て味を決めつけないで、実際に飲んでみるのが一番面白いんだろうね。


今回のまとめ

  • 酒母は、本仕込みの前に清酒酵母を十分に増やし、酸性の環境で安全な発酵につなげるための仕込み
  • 生酛は、乳酸菌に乳酸を造らせながら、山卸を行って育てる酒母
  • 山廃は、生酛の山卸を廃止した「山卸廃止酛」
  • 速醸は、醸造用乳酸を最初から加えて酒母を育てる方法
  • 山廃酒母と速醸酒母は、どちらも1909年(明治42年)に醸造試験所で開発された
  • 生酛・山廃などの生酛系酒母は、乳酸菌が乳酸を造る時間が必要なので、速醸より酒母造りに時間がかかる
  • 酒母の違いは酒質に影響する要素の一つだが、酒母だけで日本酒の味が決まるわけではない
  • 現代では、生酛・山廃・水酛などの伝統的な技法を使いながら、非常に綺麗で軽快な日本酒も造られている

〖酒逢店主🍶〗

だいぶ長くなったけど、初回はこんな感じでいいかな。

「生酛と山廃って何が違うの?」という話から始まったのに、結局、酒母・乳酸菌・歴史・酒税・現代の酒造技術まで来ちゃった(笑)。

まぁ、この脱線も含めてこの企画ということで。

また別のテーマでもAIと喋りながら掘り下げてみます。

〖酒逢店主🍶 × AI 🤖〗<また次回〜👋👋


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🍶 お酒の用語・知識に関するよくある質問

質問1:お酒の用語や知識は、なるべく覚えた方がいいですか?

お酒を楽しむために、用語を暗記しなければならないわけではありません。飲んで「美味しい」と思えれば、どんな製法なのか、どんな原料や酵母を使っているのかを知らなくても、それで十分です。わざわざ評論家のように味を言語化する必要もありません。

ただ、それぞれの言葉が何を意味し、どんな歴史や技術的な背景を持っているのかを少しずつ知っていくと、お酒を見るときの「解像度」はかなり変わってきます。

例えば日本酒なら、何も知らずに裏面ラベルを見たときには、「酒蔵名+よく分からない専門用語がたくさん書いてある」くらいで終わってしまうかもしれません。

でも、酒母、酒米、酵母、火入れ、生酒、搾り方など、それぞれの意味が分かってくると、

「生酛なのに、こんなに綺麗なんだ」
「火入れなのに、このフレッシュ感はすごい」
「この酒米を、この蔵はこう表現するのか」

といった、一段違った見方ができるようになります。

用語を覚えること自体が目的というより、そのお酒がどんな背景や技術の積み重ねで造られているのかを見るための材料が増えていく、くらいに考えるのがちょうどいいと思います。

質問2:お酒の用語やスペックが分かれば、飲む前に味を当てられるようになりますか?

ある程度の方向性を予想するための手がかりにはなりますが、完璧に味を当てることはできません。

例えば同じ「生酛」でも、力強く濃醇なお酒もあれば、驚くほど綺麗で軽快なお酒もあります。「辛口」も同じで、一つの分類の中にまったく違うタイプのお酒があります。

原料、酵母、製法、発酵、火入れ、熟成などは、それぞれ味わいに関係する要素ですが、お酒はそれら複数の条件が組み合わさって完成します。

だから知識を「このスペックだから、きっとこういう味だ」という答え合わせに使うよりも、

「この条件から、この造り手はどんな味に表現しているんだろう?」

と考えながら飲む方が、お酒の楽しみ方としてはずっと面白いと思います。

質問3:同じ原料や酵母、同じ製法でも、造り手によって味が違うのはなぜですか?

お酒の味は、一つの要素だけで決まるものではないからです。

例えば日本酒なら、同じ酒米を使っていても、酒蔵の考え方や技術体系、仕込み水、精米、麹造り、酵母、酒母、発酵温度、搾り、火入れ、熟成などが違えば、出来上がるお酒も変わります。

そして、そこが知識を持って飲み比べる面白さでもあります。

例えば同じ原料や製法のお酒を何本か飲んでいくと、「この条件のお酒の中では、この造り手の表現が自分には一番しっくりくる」と感じることがあります。

少しお芝居に例えるなら、「同じ演目でも、演じる役者が変われば表現も変わる」のと似ています。

原料や酵母、製法などの条件が「演目」だとすれば、それをどう表現するかには、造り手の考え方や技術、それぞれの造り手ならではの個性が現れます。

質問4:お酒の知識が増えると、お酒選びはどう変わりますか?

最初は、「甘いのが好き」「辛口が好き」「飲みやすいお酒が好き」といった大きな感覚で選んでいたものが、知識と飲んだ経験が結びついてくると、少しずつ自分の好みを細かく捉えられるようになります。

例えば日本酒なら、

「生酛でも軽快なタイプが好き」
「この酒米を使った中では、この蔵の表現が好き」
「火入れなのにフレッシュなタイプが好き」

といった具合です。

つまり、知識が増えること以上に、“知識によって整理された飲酒経験”が増えていくことが大きいのだと思います。

それによって、単にお酒を分類できるようになるだけではなく、「自分は何を面白いと思うのか」「どんな表現を美味しいと感じるのか」も、少しずつ見えやすくなってきます。

この「お酒の用語・知識解説」も、用語を暗記するための読み物というより、お酒を見る視点を一つずつ増やしていくための読み物として使ってもらえればと思っています。